村山実

阪神一筋で14年間プレイ。V9時代の巨人を相手に腕が千切れんばかりの投球で立ち向かい、長嶋茂雄、王貞治らと数多くの名勝負を繰り広げた。世界で初めてスプリットフィンガー・ファストボールを投げたと言われている。

現役時代につけていた背番号11は阪神の永久欠番。

躍動感あふれるフォームはザトペック投法*と呼ばれ、常に真っ向勝負をする姿は見る者の胸を熱くした。

*ザトペック投法
ヘルシンキ五輪で5000メートル、1万メートル、マラソンの3種目で金メダルを獲得し「人間機関車」と呼ばれたエミール・ザトペックが由来。顔をしかめ、喘ぎながら走る姿が、常に全身全霊で投げ込む村山を彷彿させたことから名づけられた。

走り方と投げ方が似ていたといった直接的な関連はない。

試合中に妻の自殺を知りベンチ裏で崩れ落ちたエピソードや、長嶋にサヨナラホームランを打たれた天覧試合など、常に影のイメージがつきまとい、悲劇のエースと呼ばれた。

1998年夏の甲子園決勝。松坂大輔（横浜高校）がノーヒットノーランを達成したその日、他界。

二度にわたり阪神の監督を務めた。

一度目は選手兼任監督として就任。わずか33歳の若さで阪神を率いた。ただ、3年目途中からは指揮権を手放し選手に専念。監督は村山だったが実質的な采配はヘッドコーチの金田正泰が振るった。

二度目の監督は1988年から2年間。バース、掛布の引退もあり、6位、5位と結果は残せず退団。この後、阪神は本格的な暗黒時代に突入した。